最近MTGに関する往年の記事を色々と読んでみている。
今回、名記事と名高い「Who’s The Beatdown?」を(DeepLにて)訳しつつ読んでみたので、備忘メモ的に訳を残しておきたい。
【翻訳】Who’s The Beatdown?
絆リス
参考
Who’s The Beatdown?STAR CITY GAMES
著者はMike Flores氏である。
ということで以下訳である。
By Mike Flores January 1, 1999
エディターズ・ノート:編集部注
はるか昔、最初のマジックのウェブサイトはThe Dojoであった。
このサイトはマジックの最も基本的な原理のいくつかを掲載しており、今でも伝説となっている。
ほとんどすべての戦略的理論は、The Dojoの忠実なライターたちにまで遡ることができ、マジックの真剣なプレイヤーはこれらの古いベテランたちに恩義を感じている。
残念なことに、The Dojoは金銭的な問題により、2000年に閉鎖してしまった。
当時そこに集められていた4年間の知恵を保存するための最後の努力として、編集者は将来の参照のために記事をアーカイブするようコミュニティに求めた。
StarCityGames.comは、単にそれらの記事を転載し、新しいプレイヤーが戦略の一部を理解できるように、おそらく見たことのない古いカードを明確にするためのリンクを追加している。
The Dojoのライターの多くは、現在もマジックで活躍しており、他のサイトでも執筆している。
コミュニティの発展に貢献している彼らに、ぜひエールを送っていただきたい。
Who’s The Beatdown?
トーナメント・マジックでよく見かける(しかし微妙に、しかし悲惨な)ミスは、似たようなデッキ対似たようなデッキの対戦で、誰がビートダウン・デッキで誰がコントロール・デッキなのかを誤認することだ。
誤配したプレイヤーは必然的に敗者となる。
同じようなデッキ対同じようなデッキの対戦では、よほど対称的なデッキでない限り(つまり、真のミラーマッチ)、一方のデッキがビートダウンの役割を果たし、もう一方のデッキがコントロールの役割を果たさなければならない。
例えば、両者が攻撃的なデッキを使っている場合、これは非常に深刻なジレンマとなる。
一例を挙げてみよう。
ワシントンD.C.で開催された1.xのPTQで、私のチームメイトであるAl Tranは、ベスト8をかけてスライデッキと対戦していた。
AlはLan D. Hoの白赤ウィニー/ジャンクデッキをプレイしていたが、通常はアグレッシブなデッキである…しかし、スライデッキとの対戦では違ったのだ。
試合は1-1となり、3ゲーム目でトップ8入りが決まることになった。
Alの対戦相手が先手をとり、《ジャッカルの仔/Jackal Pup》をプレイした。
この時点で、Alは《呪われた巻物/Cursed Scroll》2枚、《剣を鍬に/Swords to Plowshares》2枚、《名誉の道行き/Honorable Passage》1枚、そして手札には土地があった。
Alは《ジャッカルの仔/Jackal Pup》を《剣を鍬に/Swords to Plowshares》しないことを選択し、最初の攻撃で2枚のダメージを受けた。
相手はもう1枚の《ジャッカルの仔/Jackal Pup》をプレイした。
Alは《剣を鍬に/Swords to Plowshares》をプレイせず、巻き物マナか《稲妻/Lightning Bolt》を待つことにした。
自分の2ターン目、Alはもう1枚の土地と《呪われた巻物/Cursed Scroll》をプレイし、土地が1枚しかない状態になった。
対戦相手の3ターン目には、お察しの通り、もう1枚の《山/Mountain》がセットされ、《ボール・ライトニング/Ball Lightning》が続いた。
Alは《ボール・ライトニング/Ball Lightning》へ《剣を鍬に/Swords to Plowshares》をプレイすることを余儀なくされた。
次の数ターンでAlはコントロールを得たのだが、結局《ボール・ライトニング》でやられてしまったのだ。
何が問題だったのか?
Alはビートダウンデッキで、《ジャッカルの仔/Jackal Pup》を介して相手にダメージを与えたいと考えていた。
しかし、このマッチアップでは、彼はコントロール・デッキをプレイしなければならなかったのだ。
スライはジャンクよりもはるかに速いので、ジャンクが勝つためには、スライの序盤のスピードを除去で抑え、中盤を《呪われた巻物/Cursed Scroll》でロックする必要があった。
スライにも《呪われた巻物/Cursed Scroll》があり、ジャンクよりも《稲妻/Lightning Bolt》の数が多いため、ジャンクが勝つための唯一の方法は、自分の脅威となるカードをプレイしている間に、ライフを安全圏に保つことだ。
表向きは《ジャッカルの仔/Jackal Pup》でスライのプレイヤーに4点の追加ライフを与えることで最初のレースでは不利になるが、この例では、Alが《ボール・ライトニング/Ball Lightning》で6点のライフを与えなければならなかったことがわかる。
そして、彼がコントロールをする前に《ジャッカルの仔/Jackal Pup》により8点ものライフを削られていた。
アルは、《ジャッカルの仔/Jackal Pup》を《剣を鍬に/Swords to Plowshares》し、《ボール・ライトニング/Ball Lightning》へ《名誉の道行き/Honorable Passage》をプレイし、そして《ヴェクの聖騎士/Paladin en-Vec》や《サルタリーの僧侶/Soltari Priest》などを使って脅威を与えることでライフを20点にして中盤戦に突入した方が、はるかに良かったはずだ。
同じことが、コントロール系のデッキ同士の対戦でも言える。
同じPTQで、私は「ハイタイド」をプレイして、通常は私にとって危険なマッチアップである「カウンタースリヴァー」と対戦した。
相手はスリヴァー、《崇拝/Worship》、カウンター呪文に加えて《呪われた巻物/Cursed Scroll》といういつものラインナップを組んでいた。
彼は自分がコントロール・デッキだと勘違いしてた。
2ターン目に《水晶スリヴァー/Crystalline Sliver》をプレイし、彼は2ターン後に《崇拝/Worship》をプレイした。
その返しで私はコンボで彼を倒してしまった。
(第1ゲームでは《パリンクロン/Palinchron》で彼を倒したが、私がに《撹乱/Disrupt》や《魔力の乱れ/Force Spike》、ドロー呪文だけを見せていたので、彼は私がよりクリーチャーの多いデッキだと思ったのかもしれない)
それはさておき、この対戦では明らかに私がコントロールデッキだったのに、彼は自分がコントロールデッキだと思ってしまった。
私は同等以上のパーミッションを持っていたが、彼がスリヴァーを入れているのに対し、私はカードドローとデッキ操作を持っていた。
彼がデュアルランドを持っていたのに対し、私は《Thawing Glaciers》を持っていた。
私の《Thawing Glaciers》は、私が土地のドロップを逃さないようにするためのものであった。
彼の《渦まく知識/Brainstorm》を2枚、《撹乱/Disrupte》で打ち消した。
つまり、長期戦では常に私が勝つことができたのだ。
したがって、彼のすべきだったことは、いちはやく私を殴り切ることだったのである。
通常のやり方は、そこそこの大きさのスリヴァー(パワー2以上)で毎ターン攻撃し、相手の青のデッキが脅威となりそうなもの(《神の怒り/Wrath of God》、《仕組まれた疫病/Engineered Plague》、この例で言えばハイタイドのフィニッシュ・コンボなど)に対抗するためにマナを空けておくというものだ。
まず第一に、彼はもっと積極的に脅威を繰り出すべきだった。
たった1枚の《水晶スリヴァー/Crystalline Sliver》のおかげで、私は何ターンも《Thawing Glaciers》とドロー呪文を使う猶予を得てしまったのだ。
第二に、タップアウトは死を意味する。
私は彼に《転換/Turnabout》を使う必要さえなかった。
似たようなデッキ対似たようなデッキのマッチアップでは、どのような役割を果たすべきかを考えるために、次のような点に注目したい。
- どちらがよりダメージを与えるか?通常はビートダウンデッキでなければならない。
- どちらが除去能力が高いか?通常はコントロールデッキだろう。
- パーミッションとドロー呪文の数が多いのは?ほとんどの場合、コントロールデッキに軍配が上がる。
もしあなたがビートダウン・デッキなら、相手があなたを殺すよりも早く相手を殺さなければならない。
コントロールデッキの場合は、序盤のビートダウンを乗り切り、カードアドバンテージを得られるような状態にしなければならない。
誰がビートダウン・デッキで誰がコントロール・デッキかを正しく判断する例として、1998年の全米大会のベスト8で行われたDavid PriceとAndrew Pacificoのスライ対スライの試合をみていただきたい。
一見、似たようなデッキを使っているように見えるが、デザインに大きな違いがある。
訳注:原文にもリストが掲載されていない。
David Price氏のDEADGUY REDなるデッキは下記の動画にてリストが確認できる。
また2011年時点ですでに「Who’s The Beatdown?」を翻訳されている方がおり、リストを発掘されていた(2021年7月時点ではリスト元を発見できず)。
参考
【翻訳】ビートダウン VS ビートダウンはあり得ない/Who’s The Beatdown?【Starcitygames】.
DaveのデッキはPacificoのデッキよりも多くの《呪われた巻物/Cursed Scroll》を搭載しており、《ボガーダンの鎚/Hammer of Bogardan》と《投火師/Fireslinger》も搭載していた。
彼のデッキのビートダウン要素は、《ジャッカルの仔/Jackal Pup》と《ボール・ライトニング/Ball Lightning》だけで、他のカードはコントロールとユーティリティーを重視していた。
Pacificoのデッキはもっとダメージ志向だった。
除去ではなく、攻撃志向の軽いクリーチャーを中心にしていた。
《ジャッカルの仔/Jackal Pup》や《ボール・ライトニング/Ball Lightning》に加え、《蛮行ゴブリン/Goblin Vandal》、《モグの下働き/Mogg Flunkies》、《スークアタの槍騎兵/Suq’Ata Lancer》、《ヴィーアシーノの砂漠の狩人/Viashino Sandstalker》が採用されている。
さらに、Pacificoのデッキには《投火師/Fireslinger》と《ボガーダンの鎚/Hammer of Bogardan》がなく、《呪われた巻物/Cursed Scroll》も3枚しかなかった。
Daveのデッキは確かに早いスタートを切ることができたが、この対戦では、彼のデッキは長期戦を想定したコントロール・デッキだった。
ある対戦では、Daveは土地と巻物をプレイするだけで、他のことはほとんどしなかった。
彼はまず、ブロックや《稲妻/Lightning Bolt》でPacificoのクリーチャーを除去し、巻き物でのロックをかけて少しカード・アドバンテージを得て、ゲームを終わらせた。
もしDaveがPacificoとダメージレースをしようとしていたら、彼は勝てなかったかもしれない。
二人のプレイヤーがただやみくもにクリーチャーをぶつけ合っている場合、よりダメージを与えるカードを持っている方がレースに勝つだろう(ただし、King of Red(Davidの通称)からの優れたスライ・プレイを期待したいところである)。
最後に、「スーサイド・ブラック」対「スライ」の対戦について考えてみよう。
どちらも非常に速いビートダウン・デッキだ。
スライが常に勝つだろう。
どちらのデッキのダメージが大きいか?
スーサイド・ブラックだ。
《カーノファージ/Carnophage》や《肉占い/Sarcomancy》、時には《肉裂き怪物/Flesh Reaver》など、パワー・コスト比の高いクリーチャーを多く採用している。
《憎悪/Hatred》まで入っていることもある。
自分自身にもダメージを与えるカードだ。
除去が多いデッキは?
スライである。
もしスーサイド・ブラックが《呪われた巻物/Cursed Scroll》を持っていたとしても、スライはそれに匹敵する。
さらに、スライのデッキはウィニークリーチャーだけでなく《稲妻/Lightning Bolt》などの火力も持っている。
スライは非常に高速(4ターンキルできる)だが、スーサイド・ブラックはデッキタイプや《暗黒の儀式/Dark Ritual》の引き方によっては2~3ターンキルが可能となっている。
明らかに、スーサイド・ブラックのデッキはビートダウンのデッキでなければならず、スライのデッキはコントロールのデッキでなければならない。
しかし、スーサイド・ブラックはビートダウン・デッキになる余裕がない。
スライのデッキには火力がたくさんあるので、多くのクロック、特に《肉占い/Sarcomancy》と《肉裂き怪物/Flesh Reaver》を出すことができない。
また、《火葬/Incinerate》での敗北を恐れて、《憎悪/Hatred》を唱えることもほとんどできない。
そのため、スーサイド・ブラックのデッキは、コントロール・デッキとしての役割を果たさなければならない。
このマッチアップを目撃したことのある人なら誰でも、(少なくともスライデッキがまともなドローを得たときには)スーサイド・ブラックがいかにコントロールっぽくプレイされるのかご存知だろう。
役割の見誤り=ゲームロス
サイドボード後のスーサイド・ブラックは、有利だとされている。
クリーチャー除去やライフゲインを目的とした「自分にダメージを与える」カードの多くを取り除くことで、コントロールの役割をより適切に果たすことができ、(絶好調とまではいかないまでも)勝率が大幅に向上するためである。
おわりに
ということでかの名記事「Who’s The Beatdown?」を読んでみた。
以前訳したReid Duke氏のLEVEL ONEシリーズの「ROLE ASSIGNMENT」の回でも紹介されていた名記事である。
自分のデッキと相手のデッキを並べたときにどちらがビート側に行くのか、コントロール側に行くのかよく見極めて立ち回ろう。